この 歸順匪の情報からも 對岸の動向をはつきり知つた前田 署長は「今の様子から見ると、今 明日中には必ず出ます。しかし、 もうこちらには鐵壁の討伐陣が布かれてあるのです、やつら思ひ切 つて出て來ればたまには華々しい戰ひもやつて見たいですがね・・・豪傑笑ひの中にもいらだつ表情を隱し()れなかつた、明日の行程を慮る記者團は、互に顔を見合せて默り込んでしまつた、この夜旅舎榮屋の洋燈の下では、又しも匪賊の話ではづんだ、一行の仲間に恒川三長郵便局長も加はり、こゝは現地だけあつて聞く話も實感がとも なつて來る 金日成といふよ男はどういふ譯で匪賊の頭になつたんだ 『大正八年の萬歲事件の騷ぎに刺戟されて民族主義運動に轉じ て、匪賊となつたさうだ、そい つも哀れな宿命の子なんだね』 『やつは三十そこくの色男で 滿語の演說が實にうまいさうだ生れは咸南甲山とか間島とかい つてゐるが、子供の頃は人足で 歩いて相當苦勞したものだつて ......] 「しかし最近金日成は歸順する 傾向が濃厚に見えて來たといふ が本當ですか?」 「それは本當です、一人では脱出が出來ないばかりか

最近は直屬部下二名が監視につきまとつてゐるさうで容易に身動きが出来ないからであつて、金日成外幹部の部隊で大分歸順の意思をもつてゐるものあるさうです 「金日成が歸順して來たら後の處置はどんなにするのですか 「あれだけ頭のよささうな男だ から、いい方に向けて指導すれほ立派な人間になるでせう...」 「崔賢はどんな男ですか 『あれは汪清縣から奥地を管轄 てゐるやうですが、金日成よ りか、非常に精悍で、悪質のも のらしい』

ゝ : 히라가나의 반복 기호. こゝ 는 ここ 를 뜻함.